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ホイールアライメント調整例

車種 フォルクスワーゲン パサート
年式 未確認
型式 未確認
グレード VR6
走行距離 未確認
タイヤ、ホイールサイズ 未確認


トラブル依頼事項

ショックアブソーバーを変えてからステアリングセンターが狂った。その頃から右へ流れるようになった。

受け入れ検査及び試乗

ホイールアライメントのトラブルで最も多いのはステアリング流れ、しかも、左流れが断然多いのです。その中で右流れの事案はそうそうあるものではありません。
一部、セットバック等でのサスペンション部品位置の狂いやフレーム寸法の狂いでは右流れの症状が出る場合もありますが。

今回のパサートは無事故車と言うことと、ショック交換後のトラブルと言うことなので少し悩みました。果たしてショック交換後に右流れが発生する原因はあるのでしょうか。。。
リヤはリジットアクスル。ショックを交換するのに脱着の必要性はありません。よって後輪のミスアライメントは考えにくいことです。
ただ一点思いついたのが、ショックを交換したとなると車高も変化します。それに伴いタイヤのグリップ力も上がります。タイヤが路面を押さえつける力が増したため、元々あった後輪のミスアライメントを誘発したのではないかと。。。

ステアリングセンターの狂いはさほど難しくは無く、シェルケースとナックルの連結部分のアジャストの関係でキャンバの誤差が出たためと思われます。

早速、試乗をしてみたがやはり右へ流れていきます。目視で右後輪のインが確認出来るぐらいなのでリヤアクスルハウジングの移動、最悪なら加工の提案をし、お客様の同意を得て作業に取り掛かりました。


ホイールアライメントの測定、調整をする前にセットバック、オフセットの測定を済ませます。
何度もくどいようですが、たとえ無事故車であったとしても確認を怠ってはいけません。

リフトアップをして気づいたのですが、フロントドライブシャフトの長さが左右で異なっています。
この現象は走行にはあまり好ましくありません。長さの違いより駆動時にモーメントが働きます。当然短い方のモーメントが大きくなります。
おそらくこの車はそれを補正するのにドライブシャフトの太さを変えているのだと思います。

しかし、車が接地した時、角度の誤差がでます。この場合、シャフトが短い方の角度が鋭角になりモーメント差がでます。
この車の場合、左側が短いのでモーメントから判断すると右へ流れることになります。

もしこのモーメントが原因で右流れを起しているとしたらお手上げ状態です。ホイールアライメントでドライブシャフトモーメントを打ち消すのは至難の技だからです。


測定作業 【リヤトー】


あれこれと考えていても仕方がないのでとりあえず診断をして見ました。画像は右後輪の測定ですがやはり目視のとおりインがきつく付いています。この車の場合、後輪トーがトータルで6mmもあり、キャンバも車高を変更しているのでマイナスの1°30′程度と非常にタイヤに厳しい設定となっています。
走行を重ねた将来にはトー、インとネガティブキャンバの複合でタイヤの内側偏摩耗は避けられないところです。リジットアクスルの場合はあまり車高は下げないことが肝心ですね。


調整作業 【リヤトー】


右後輪をアウトにするため、アクスルハウジングのボルトを外してみた。幸いいくらかのアジャストがあるため3本のボルトを緩め、左後輪のトー数値と同じにした。


調整をする前のホイールベースは次の画像のとおりですが、左後輪のインがきついためホイールベースも左が短いことが確認出来ます。



左ホイールベース 【2624mm】



右ホイールベース 【2618mm】
右後輪がインと言う事は、リヤアクスルがずれて取り付いていたと解釈できます。この現象はリジットアクスルにはよくあることで、おそらくこの車の場合は新車製造時での事と推察します。

国産車にも同様の事はあり、国産車の場合は意図的に右後輪をインにしています。左側通行の本国では決して車を左に流したくないのです。国産トップメーカーの最高級ミニバンですらこういう【細工】がしてあります。右へ流す設定は悪くはないと思うのですがそれに伴う弊害もあります。(詳しい弊害はまたの機会に解説を考えています)
やはり、調整機能を登載してほしいものです。最高級の車に調整機能が無いというのは如何なのもでしょうか???


右リヤ トー イン 4mm イン 3mm
左リヤ トー イン 2mm イン 3mm

幾何学的中心線に対し、後輪左右のトーを整えた。ホイールベースも左右差は無くなり、左右共2622mmとなりました。

この条件が満たされば車は真っ直ぐ走ります。後はフロントーを調整し、キャンバ以下を確認するだけです。


調整作業 【フロントトー】



左フロントトー【イン 2mm】


左フロントトー拡大【イン 2mm】
ステアリング曲がりの原因は上記、左フロントトー【イン 2mm】の仕業です。ショックアブソーバーを変更の際、シェルケースのアジャスト部分のほんの僅かなクリアランスがもたらす副産物です。

後輪同様、幾何学的中心線に対し左右を同じ角度にしてあげるとステアリング曲がりはありえません。勿論、キャンバを確認、調整後の作業になります。


その他の数値

項目 目標値
フロントトー 0mm 0mm 0mm
フロントキャンバ 0°00′ 0°00′ 0°00′
キャスター 2°20′ 2°10′ 2°15′
SAI 15°15′ 14°45′ 15°00′
20度回転角差 -1°50′ -1°40′ -1°30′
最大回転角【左】 34°30′ 29°30′ 左右差ゼロ
最大回転角【右】 34°30′ 29°30′ 左右差ゼロ
リヤキャンバ -1°45′ -1°30′ -1°30′
リヤトー 3mm 3mm 1mm

全体的には申し分の無い数値に仕上がりました。欲を言えば後輪のキャンバとトーの量が気に食わないところではありますが。
しかし、後輪の形状からすれば不可能な作業になりますのでお客様には説明を申し上げ、納得を頂いた。

作業を終えるにつけ不安が脳裏をかすめてきました。後輪トー以外の不具合が感じられないのです。

現在に至るまで色々な車を調整してきて、後輪トーの2mmの不具合で今回の様な走り方をした車が無いのです。
試乗の際の右流れは大変顕著なのもでした。果たして解消しているのかどうか・・・

不安を胸に仕上がりの試乗に出かけました。


コニシティ

不安は的中しました。

右流れは全く解消していません。アライメント数値を見ても右流れの原因となる要素は全くないという事からタイヤを疑うしかないと思い、ラボに帰りフロントタイヤを左右入れ替えて再度、試乗して見る。

判断は的中しました。今度は左流れに変わっています。と言うことはフロントタイヤのどちらかに欠陥があるということです。直感的にそう思った訳ですので確証はありません。しかも右フロントタイヤの欠陥と思いました。このタイヤの欠陥を探し出すことは容易ではありません。今回なぜ右フロントタイヤと直感したのかの説明も容易ではありません。今まで数多くの試乗から車の流れ方のほんの少しの癖より直感するのです。(嘘のようで本当の話しです。)しかも今回の症状はコニシティです。【タイヤがコーン状に変形している欠陥】
(確証はないのですが、過去の経験より左右どちらかに流れるタイヤはコニシティと残量CFのバラツキに分けられます。コニシティの場合、左右を入れ替えると稀に改善します。残量CFのバラツキでのステアリング流れはどのようなローテンションをしても改善は見られません。)


作業を終えて

コニシティと思われるタイヤを今度は右後輪に装着しました。

その訳は、幸か不幸かこの車の後輪キャンバはマイナス1°45′もあります。ましてトーはインに3mmと大きなものになっています。コーン状のタイヤがこのキャンバにて補正をしてくれるのではないかと考え、また大きなイン量に助けられコーン状のものが走行中には変形をしてくれないかとの望みでした。

望みは通じたようでした。再度の試乗では全く違和感のない走りをしてくれました。お客様にも喜んで頂き、やりがいのあった一台でした。


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