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ホイールアライメント調整例

車種 三菱 レグナム
年式 9年
型式 EC5W
グレード VR-4
走行距離 62000Km
タイヤ、ホイールサイズ 205/55-16




トラブル依頼事項

中古車を購入後、右へステアリングが流れて行く。
受け入れ検査及び試乗

試乗をする前に目視でフロントホイールの位置(ホイールベース)を見てみると右が短いのが確認できた。
目視でホイールベースの左右差があるということは試乗しなくても右流れの症状は明らかということです。しかし念のため試乗してみた。
やはり右へ流れて行く。ステアリングの位置も11時方向でかなり狂っている。
早速ラボに帰りリフトアップしてみる。

ホイールを左右に揺すってみたところガタがあるのでタイロッドエンドの損傷もみられた。左右共である。上下でのガタはなかったのでハブベアリングは大丈夫と判断した。
左フロントロアアームボールジョィントの位置を長さ確認
左の長さを固定し、右フロントロアアームボールジョィントの位置を確認する。

明らかに後退しているのが分かる。

同時に対角を測定してみたところ規定の長さに達すると大きな狂いは無いと判断した。
ロアアームが付くエンジンメンバの位置を左右確認する。

この時点で左右差が無ければ右ロアアーム2本の取替えだけでセットバックの修正ができます。

しかし甘くはありませんでした。画像では判断しずらいですけれど約2mm後退をしています。
エンジンメンバの付くフレームを測定したところ左右差は無かったので、今回の調整個所はエンジンメンバ。取替え部品はロアアームNo1,No2、左右タイロッドエンドとし、キャンバの左右差が発生した場合は予算の関係上、プレス加工としました。(事故修理の痕跡があり、足回りは手付かずでしたので必ずキャンバは変わっているはずです。)
交換作業
右ロアアームNo1,No2

これ以外に左右タイロッドエンドも同時交換。

取替え時にエンジンメンバのボルトを緩め、少しのクリアランスを利用し、メンバを車の中心より左右、前後差の無いように調整した。

今回の車はメンバにクリアランスがあり、多少の動きをしてくれるが、クリアランスゼロの車ではお手上げになること間違いございません。
お客様にメンバ代金の上乗せになり出費がかさんでしまうのです。

最近の車はローグレード車でもメンバのクリアランスはゼロで調整ができないようになっています。
しかも、ロアアームの交換ですら多くの部品を脱着しなければ交換できないように設計されています。

カーメーカーは新車を売る事を第一に、直す事はできない工夫は素晴らしく、そのアイデアには感服する次第です。
確認
部品交換、メンバ調整後、再度確認のため左右のロアアームボールジョィントの位置を測定する。

ボールジョィントにテープを貼ってあるのは、よりセンターをシビアに確認するためです。

長さ同様対角にも左右差は1mm以内となり満足のできる土台作りができたと思います。

ホイールアライメントは3階建てのサービスです。これで1階部分は完成したのです。
3階部分は検証済みですので残りは2階部分。

この状態でホイールアライメントサービスは90%完成をしています。
加工
1階部分を完成した後、再びホイールを装着し、キャンバの左右差を簡易測定してみる。

ホームセンターで売っている水準器ですが侮ってはいけません。かなり正確です。
予断ですが、家やビルを作る基礎を測定するのは水準器です。コンピュータ式のホイールアライメントテスタもしっかりと水準器が搭載されています。


測定結果は、やはり左右差がありました。当然のことですね。
90%完成と申し上げましたがステアリングナックルアームの加工が残っていました。

事故痕跡のある右側がポジティブでした。当然修理をしなければなりません。しかし、今回のステアリングナックルアームの加工は左側です。それには訳があります。


左ステアリングナックルアームを取り外した状態。

この車のオーナーは、将来インチアップを考えておられます。
インチアップをすれば当然今のタイヤより扁平タイヤになる訳です。
扁平タイヤ装着ではキャンバ角は限りなく【0°00′】に近づけなくてはいけません。

よって右側のキャンバが左よりポジティブですので右側の数値を採用し、左側の変更としたのです。
左ステアリングナックルアーム

ポジティブ側に変更になるようプレス加工をしている様子。

ホイールアライメント測定

ここからが本当のホイールアライメント測定なのです。

要するに最終の2階部分の測定に移るのです。今までの事はホイールアライメントを測定する基礎の確認であり、ホイールアライメントの調整を可能にする土台作りであった訳です。

ホイールアライメントの調整を依頼された場合、いきなりテスタに車を載せて調整をし、不具合があれば【フレームが曲がっています】と言われた経験はございませんでしょうか?
いきなりテスタに載せてフレームの損傷が分かるのなら、とんでもなく優秀なプロアライメンターであることは間違いございません。


Pro-Autoアライメントテスタの考え方は、アライメントの基礎を作る1階と3階部分については、ボディーショップが日々行っている事故修理の理論を最終サスペンション部品まで延長し、確認、微調整することでタイヤの設置点を正台形の形を作り上げることです。

その確認作業でフレーム寸法やサスペンション部品の損傷も確認できるのです。よって、ホイールアライメントテスタでのいきなりの測定で、フレーム寸法やサスペンション部品の損傷を特定するのは一部のプロアライメンター以外皆無に等しいと考えます。

【キャンバ】


左フロントキャンバの測定。

マイナスの0°45′を指しています。(運転席に乗車状態)
右フロントキャンバの測定。

同じくマイナスの0°45′を指しています。(運転席に乗車状態)

プレス加工が成功したようです。

【ホイールベース】

左ホイールベース。

【2642mm】

右ホイールベース。

【2643mm】

【その他の数値】

項目 目標値
フロントトー 0mm 0mm 0mm
フロントキャンバ -0°45′ -0°45′ -0°45′
キャスター 4°30′ 4°15′ 4°30′
SAI 8°40′ 7°30′ 8°40′
20度回転角差 -2°00′ -1°10′ -1°30′
最大回転角【左】 31°30′ 27°00′ 左右差ゼロ
最大回転角【右】 28°00′ 34°30′ 左右差ゼロ
リヤキャンバ -1°55′ -2°00′ -2°00′
リヤトー 0mm 0mm 0mm

作業を終えて

試乗をする間も無くお客様が引き取りにこられました。よって、コメントが大変遅くなりました。

作業的には絶対の自信はありましたが、やはり不安です。数値もSAI以外問題無く仕上がったと思います。今回のポイントはやはりセットバックです。事故などでロアアームが変形したままではいくらアライメントを測定、調整しても完全に無駄ということです。
ホイールアライメントの基礎はボールジョイントの位置が正台形になっていることが第一ということですね。

後日、お客様に電話にて確認をしたところ、大変満足をして頂きました。ステアリング流れが解消した上、ワダチでのステアリング取られも解消したとのことでした。
左ステアリングナックルアームのプレス加工が効いたみたいです。扁平タイヤ装着ではサイドウォール強化によるワダチでのステアリング取られが顕著になります。
キャンバは出来るだけ0°00′方向が望ましいですね。


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